マンガの(武林風)描き方
その3・クォリティーとスピードのおはなし
はじめにおことわりしておきますが、今回のネタは(1,2も基本的にはそうなんですが)かなり武林の「井の中の蛙」的な考えなので、当然、武林自身も不偏の真理とは思ってはいません。というより、常に(現在も)本当にこれでいいのか迷い続けている、と言った方がいいのかもしれない事柄についてのお話です。
それでも「奴のたわ言、考え聞いてやろうじゃね〜か」って方は、どうぞ読んでやって下さい。
今回は、昨今作家読者ともどもよく使われることば、絵的、内容、演出、その他含めた「クォリティー」についてです。
「このマンガ、クォリティー低いよな。」...う〜ん。読者同志の間でよく聞かれそうな一言ですね。「クォリティー」いいことばだとは思いますが、創り手にとっては恐いことばでもあります。
画面の緻密さ、描き込み、トーンの量、あるいはもっとシンプルに絵の達者さかげん。ヒーローヒロインがかっこいい、かわいい、セックスアピール
の有無、モンスターとかがちゃんとグロく描けているか、背景にていねいなトーン仕上げがほどこされているか......。
マンガ好きで読み慣れている方々には、いまさら説明する必要ないことだと思いますが、もちろん大切なファクターであるし、いま流行の、というより主流のマンガ評価のバロメーターのひとつであるのでしょう。
特に武林の仕事畑は、そういうニーズが一段と高く、また周りにも絵的な「クォリティー」の高い作品が多いと思ってます。
武林も一読者としては、そういったとこにこだわった作品は好きです。緻密で丁寧な絵、「はぁ〜」と感心してしまうほどのこだわり絵は、見ていて気持いいものですから。
でもそこで、読者としてはどうも残念なことがしばしばみられるのです。
話が解りづらい。話が見えてこない。絵柄にはかなり魅力を感じるのに、どうもストーリィ展開に「おいてきぼり」をくってる...という気がする。
一話が短くて、満足できない。
下手すると、休載なんてことがあったりする。
最悪、未完のまま連載が途切れる。
「なんで、こうなるんだろう?」って考えた時、ひとつの絵にかかる、手間と時間とを考えれば、容易に想像がつくことなんですけどね。
贅をこらせば、スピードは犠牲になるってことですか。
以前武林は、雑誌のインタビューで、「スピードを大事にします。」と答えた事があるんですが、これはなにも、描くスピードを自慢しているってわけじゃあ
ないんです(実際そんなに手は早い方じゃないですし)。
いろんな意味で、スピードが大切だって思っているんです。
その1
ネームを創るスピード。タイムスケジュールということもありますが、頭の中にできあがったもの(話・イメージ・キャラ・その他もろもろ)を、できるだけ冷めな
いうちに(一応の)カタチにする。
時間をおいて「熟成」させたほうがいい場合もありますが、コンテにもしないで「寝かせて」おくと、所在が無くなってしまいます。(笑)
その2
コンテにした時、さらに直すべきところが見えてくるので、それを原稿へと作画するスピード。
そのネタに、まだ自分自身アツいものを持っているうちに、作画に入るんです。
通常、武林は32Pくらいの平均的ノルマページですと、ネーム・コンテに2〜3日、作画に4日、仕上げに1日、といった感じで進行します。
現在月連2本ですから、それぞれの進行を適度にからめて、1週間程度のネタを寝かせる期間を設けています。(このくらいが、武林にとってはちょうどいい「熟成」期間と思ってます。)
<例>
1〜3日
A誌ネーム
4〜8日
N誌作画修羅場
9日
N誌入稿と次回の打ち合わせ
10日
A誌ネーム打ち合わせ、直し
11〜13日
N誌ネーム
14〜18日
A誌作画修羅場
19日
A誌入稿と次回の打ち合わせ
20〜
N誌ネーム・・・
.....なんて具合で、間にその他の仕事や取材(?)買い物日、オフ日、などがはいって、一ヶ月がギチギチに埋まっています。
その3
そして次の話を創るスピード。
連載である以上これが大事ですよね。話作りが途切れちゃどうしようもないですから。それも入稿終わってテンションが下がるのはいいとして、プツンと切れちゃ
うと次に立ち上げるのに、またえらい手間かかっちゃうんですよ。
下手をすると、なかなか話創りモードに入れなくて、休載、その次もそうなると.....打ち切りなんてことも(苦笑)。
自分のマスターベーションとしてマンガを描いているのなら、別におとがめなしだと思いますが、少なくともプロとして、メディアに載せている者にあってはならない事ですよね。
読者がいるんですし。
待っていてくれるんですし。
その4
読者がページをめくるスピード。
これはかなり作家の個性によって意見が分かれることだと思いますが、武林としては読者が読むテンポを考えながら、描きたいと思っています。
ぱっぱっと、とばして読むべきページ、ちょっとじっくり凝視してもらいたい見開きなど、惰性的にならないように、理想としては、なんかリズムみたいなテンポをあたえられるような...。
そういう演出もアリだと思ってるんですけど。
....と、武林こだわりのスピードについて、書いてきましたが、これらが理想的になされた場合、これもある意味クォリティーの高さと言ってもいいんじゃないかって考えています。
このスピードについてのことと、あとは「わかりやすさ」「読みやすさ」、それが話の面白さとうまくミキシング出来たとしたら...
今のところの武林の一番の理想であり、かつ課題でもあります。
.....
さぁ〜てっと、次のネームやんなきゃ!
(1998/5/26.MAXION脱稿してすぐ)