マンガの(武林風)描き方

その4

「イタいお話」と「継続は力なり」

だんだん「身を切る」ようなネタになってきて

しまって、少々後悔しはじめてるんですけど(^^;)


以前、ちょっとマイナー系の雑誌に連載描いていた時、その雑誌の編集を仕切ってたフリーのエディター氏が、見本誌をくれる際に、軽い気持で武林にこう言いました。

「武林さんは、いつも真っ先に自分のマンガを見るんですねぇ。しかもかなりジックリと。」

プロデビューしたばっかりの頃、本当に自分のマンガが商業印刷になってるのかと、印刷になった自分のマンガってどんな風に見えるんだろうと、ワクワクドキドキして、掲載誌を開いていたのは確かです。

今でも、見本誌が届くと真っ先に自分のマンガをジックリゆっくり嘗め回すように見ます。が、今では「その理由」がちょっと違ってきています。

これはマンガを描く人には共通する印象なんだと思いますが、印刷になった自分のマンガを落ち着いて見ると、どうも思った通りに描けていないんです。同人誌でも、商業誌でも、その感覚は同じ物があるんですが、自分のアラばっかり見えてくるんですね。そして他の作品が上手いにしろ、あんまり上手くないにしろ、マンガっぽく見えるのに対して、自分のマンガが、なんともその「つたなさ」に、掲載誌の中で「浮いて」見えるんです。

次からどんなに気をつけようと思っても、次の掲載誌でもまた同じ感覚に襲われます。ともすると前よりさらにヒドいモノになってる気さえします。

そして、そういう感じが続くと、その感覚に耐えられなくなって、描くことをやめてしまうか、もしくは印刷になった後の自分のマンガは目にしない、ってなことになったりするんです。

痛いんですよねぇ。「自分のマンガが、なんかダメだ」って感じることは。

それで、その感覚がどうにも払拭できないと考えた武林は、むしろその「痛さ」の理由をほじくりかえす為に、できるだけジックリと印刷になった自分のマンガを見返すことにしたわけです。

描線がどうにもヤボったい。

デッサンが崩れてる。

セリフがわざとらしい。

展開が強引すぎる。

手抜きシーンがバレバレ・・・・etc

数え上げればキリがないんですが、よくぞ毎回(現在でも・・・です)これだけ多くの「恥」を垂れ流しているもんだと、寒ぅ〜い失笑まで出てくるほどなんですが。

よく他の方から、

「考えすぎなんじゃないの?」とか

「全然そんなことないのに・・・」

などと言ってもらえますが、実際自分で痛いほど感じているので、単なるなぐさめにしか聞こえなかったりします。もしかして本気でそう言ってくれてるのかもしれませんが、でもそうなら逆に、この欠点は自分にしか気づかないものなんだから、掲載誌を見返すことをやめてしまったら、その欠点のチェックは全く出来なくなる・・・ってことになりかねませんよねぇ。

そういうわけで、自分のマンガが印刷になった時、是非何度も何度も見返すことをおすすめします。

「思わずページをとばしてしまいたくなる」とか、

「ページを閉じたくなる」「二度と開きたくない」とか、

そう感じる時こそ、得るものが、次から気をつけなければならないことが、山ほどある貴重な機会だと思うのです。

そして、その「痛い」思いを、ただマゾヒスティックに楽しむ(笑:んなアホなぁ)だけに終わらせず、嫌な思いをしただけの意味あるものにするためにも、

必ず!すぐ次のを創りはじめる!

・・・ということが大切なんだと思います。

「鉄は熱いうちに〜」という言葉通り、時間がたってショックが薄れてしまう前に、前回の恥をそそぐようにがんばってみるわけなんです。今回は描線に倍の気を配ってみようとか、今回は「まぁいいや」を絶対にしないようにしようとか、すごくリアルで、重い反省があるわけですから、「このマンガを描くうえでの課題点」が単なるお題目ではなくなるはずです。

そして、いざ次のが出来て、また印刷があがってきたのを見た時に、今度はまた別の「恥」が目を突くんです。

何度も何度も繰り返し繰り返し描き続けていても、オール・クリアしたというマンガが描けてない、というのも恐ろしいことですが、どうしようもない事実なのかもしれません。

それでもめげずに、また目先の欠点をおぎなおうとあがきながら、次のを描くわけです。

そしてまた次ぎも・・・(エンドレス)。

たぶん「100%満足のいくマンガ」なんて、一生描けないのかもしれません。たぶん・・・じゃなくて、これは絶対かな?と最近は考えるようになってきていますが。だから、言わば「決して行き着くことの無い目標」ということかもしれませんが。

それでも描き続けるんです。

満足のいくマンガなんか描けてしまったら、あるいは本人がそう感じてしまったら、もう次のが描けなくなってしまいます。つまり終わってしまうんですよ「マンガを描く」という行為そのものが。

そうして、(本人は)ずっと同じような「痛い」「苦しい」状態にあえぎつつも、描くマンガはだんだん面白く、読み応えのあるものになっていくんだと思います。そう信じています。

継続はなによりも大きな力なんですね。

そして、自分の「痛い」マンガほど、良い教材は無いと思います。

がんばって描き続けてください。武林もがんばります。

(’98/8/1)