マンガの(武林風)描き方
その13

同人誌についての私的な考察


一言に同人誌と言っても、いくつかのパターンがありますよね。

●草の根の同人会の会誌(肉筆誌や回覧誌も含む)
●学校漫画研究会などの会誌
●即売会のための個人もしくは有志による同人誌
(更にその中でも、稼ぎを、儲けを期待(予定)した同人誌)
ざっと、こんな感じに分けられるでしょうか。

また、扱ってるジャンルも様々に渡っており、
マンガとか絵に限ったものであれば、
・アニパロ(ゲームパロ)・エロ・やおい・ファンジン・創作・カルト・

イラスト集etc
筆者が、ここしばらく同人誌というカテゴリーからは、疎遠になっている
ために、ジャンル分けに「不勉強・認識不足」があるとは思いますが・・・。

もちろん、「描いて、印刷製本して、見せて」楽しいという、

同人誌の基本的な楽しみ方は理解しているつもりです。
私の学生時代と違って、オフセットの印刷代も(特にカラーなどは)

安く、美麗なものになっていますし、
同人誌即売会の数も規模も、大きくなっていますから、
楽しむためには、「とてもいい時代」になったのかもしれませんね。

で、ここでは、その同人誌についての総括的な考えを書くものではありません。

いくつかご相談のメールにもあったのですが。
あくまで、「プロを目指している」、もしくは「なれるもんならなってみたいなぁ」
「なりたい気持ちが無いわけじゃない」・・・という方々が、
「同人誌をやってる・やろうと思う」ことについて、いいことなのか悪いことなのか
考えを(あるならば)聞かせて欲しいという、ご要望にお応えできるかなぁ・・・と
思ったからです。

そんな方々むけに、私の考えを書いてみたいと思います。

私自身が以前に、

「なれるものなら、マンガを描いて食っていけるようになりたいが、

まず、無理だろうな〜」
と考えていた頃、「でも、ナニか描きたい」という欲求のもとに、

何冊かの同人誌を作っていたことがあります。
今から考えれば、つたない・下手糞なマンガだったと思いますが、今よりも

精神的には、「描きたい欲求」が、ギラギラしてたと思います。

同人誌活動って、ひらたく考えて、いいトコロ・魅力がいっぱい

あると思うんですよ。

まず同人誌というカタチにすると、自分の作品を多かれ少なかれ、
人の目にさらすことができます。
確かにマンガを「描く」こと自体も、大きな満足のひとつですが、
やはりそれだけでは満たされない欲求もあると思います。
できるだけ多くの人、同じ趣味嗜好の他人、見ず知らずの他人などに
「恥ずかしいけど、見てもらいたい」という欲求はありますよね。
同人誌というかたちにすることで、それは部分的に達成できます。

それに一応〆切があって、それまでに描くことが必要ですよね。
もちろん商業雑誌の〆切とは、重さも厳しさも違いますが、
それでも「学園祭に合わせて」だとか、
同人会の定期刊行に間に合わせるようにとか、
「即売会に合わせて」・・・「印刷屋の受付〆切に合わせて」など、
期限つきでマンガを描くことが、必要とされますね。
「なんとしてでも、あげる」ということは、将来のプロ志望の方にとっては、

大切なことですから、これも「いいこと」と言えるでしょう。

さらに印刷になった自分のマンガを見ることができます。
私が同人誌をやって、はじめに感じた喜びは、これでした。
(今では、逆に肉筆原稿を見るほうが、ココロ踊るんですが)
オフセットの印刷になった自分のマンガを見て、自己満足を得られます。
さらに、ここからもうちょっと貴重な経験として、
印刷物として、多少は客観視できるようになるため、
肉筆では見えなかった、描いてる時には気づかなかった、
「自分のマンガの欠点・あら・失敗部分」なども見えてくるのです。
正直言ってあまり嬉しくはない「成果」ではありますが、
マンガ描きを上達させたいと願ってる人ならば、多少苦しくても、
印刷になってからの「あらさがし」は、ちゃんとやっておくといいでしょう。

また、たとえ一人からでも、読者からの反応があった時には、
それこそ描いてることの醍醐味でしょう。
「描いて良かった」と感じる瞬間であり、
「また描きたい・描こうかな」という原動力にもなると思います。

さて、
いくつかの漫画家志望者のためのフォーラム・BBS・様々なカキコを
覗き見ると、
「同人誌活動は、プロ漫画家志望者にとって、マイナスの経験になりうる」
とか
「同人でパロなどにハマると、オリジナルが創れなくなる」
とか
「同人で下手に売れたり、あるいは売れセン狙いをすることによって、
その結果プロにはなりにくくなる」
などの、危険信号を発するものが少なくないようです。

実際、私のところにも
「はたして同人誌を作って、イベントで売ったりすることは、
プロ志望(の自分)にとって、あまりいいことではないのでしょうか?」
といった主旨の御質問も、いくつかありました。

はたして、同人誌活動(同人でマンガを描く・イベントで売る)というのは、
そんなにプロ活動へのアプローチに邪魔なのでしょうか?

結論から言いますと、私はこの問題に関しては、
「なんで?邪魔になるはずがないと思うけど」・・・です。
パロディであれ、売れセン狙いであれ、
読む人を意識して描く・・・という行為に、役に立つ要素はあれ、邪魔に
なる要素などほとんど無いと思っているからです。

「パロディばっかで、ウケ狙いしてると、自分のオリジナルが描けない
ようになる。」
はたして本当にそうでしょうか?
そうなる人もいると思いますし、そうならない人もいると思います。
ということは、
活動自体に「難」があるわけでなく、本人の意識次第

ということではないでしょうか。

同人誌でコアなマニア読者にウケるものと、
商業誌で不特定多数読者にウケるものと、
それが違うことぐらいは、(志望者レベルなら)誰でも既におわかりの
はずですよね。

で、その違いをちゃんと認識して、
プロデビューのための創作と、同人のための創作とを、使い分けて
いれば、何の問題も無いのではないでしょうか。
どっちも思い切りやって、結果いっぱい描くということになれば、
その描いた量は、必ず今後のチカラになってくるはずです。

(同人誌でのウケかた、ジャンル、描き方などをそのまま要求される
商業誌もありますが、それはこの場では一応「例外」とさせてもらって)
「自分は同人誌でこの方法で評価を得てきたんだ。
だから、このやり方で商業誌でもイケるはずだ。」
という考えは、間違ってると思います。
この場合でも、両方を混同してしまう当人が間違ってるわけで、
同人誌活動が間違ってるわけではありません。

描きたいものを、描きたいように自由に描く。
これが同人誌での基本だとするならば、
「楽しんでマンガを描く」という非常に貴重な場であると思います。

間違いか、間違いでないか。
是か非か。
有功か邪魔か。
それらは皆、貴方自身の意識の持ち方によるのではないでしょうか。

いつものことですが、異論・反論・その他ご意見は大歓迎です。

(2001/4/26)